中山屋誕生秘話インタビュー① こしあん偏愛歴35年

中山屋誕生秘話インタビュー①  こしあん偏愛歴35年


和洋問わず美味しいこしあんのおかしを世に増やす
というミッションを掲げ、誕生した中山屋。
創業第一作「こしあんのどらやき」は、
“つい、もうひとつ食べたくなる味”だと、
こしあん好きやスイーツ愛好家の間で話題を呼んでいます。
なぜ、中山屋が最初に手がけたこしあんのおかしが「どらやき」だったのでしょう?
そしてそこには、どんな思いや工夫が込められているのでしょう。
代表の中山仁志さんにお話を伺いました。

― 「こしあんのどらやき」発売から5ヶ月、反響はいかがですか?

ありがたいことに、たくさんのお声を頂いています。
「皮がもちっとしていて美味しかった」「こしあんの風味が爽やかで気に入った」
「甘すぎないのがいい」「こんなどらやきを待っていた」など……。
予想しなかったのですが、「子どもが、何個も食べたがって困る」というお声も頂きました(笑)。

― そんな予想外の反応もあったのですね。
今回は、中山屋のおかし作りについてぜひ伺っていきたいのですが、
そもそも、なぜこしあんのおかしを作ろうと思われたのでしょう。


まず子ども時代の話をさせて頂くと、物心ついた頃から、僕はとにかくおかしが好きだったんです。
文字通り、三度の食事より好きだったので、いろんなエピソードがあるのですが、
治療に通った歯医者さんで“おかし愛”を語り続け、最終日にケーキを貰って帰り、
親にあきれられたこともあるほどです。
おかしの中でも特に大好きだったのが、こしあんのおかしでした。
たとえば、和菓子ではお団子やおはぎを好んで食べていましたね。
それから、僕は北海道出身なのですが、
どさんこのソウルフードである『月寒あんぱん』(株式会社ほんま)や
『ノースマン』(千秋庵製菓株式会社)が大好物でした。

― おかし好きの中山さんが惚れ込んだ、こしあんの魅力についてお聞かせ下さい。

こしあんのおかしを食べると、それだけで幸せになれるというか……。
舌触りがなめらかで、口の中でスッと広がって、サッと消えるのが最大の魅力かなと思います。
この感覚は、ソフトクリームをイメージしていただければ分かりやすいでしょうか。

― なるほど。たしかに、こしあんは口溶けのいい甘さが特徴ですね。

そうなんです。でも、こしあんのおかしって、粒あんに比べてそんなに種類が多くないんですよね。
しかも、おかし市場を見ていると、その状況は僕の子どもの頃から一向に変わっていないのですよ。
だったら、僕自身や、僕のようなこしあんマニアの方々のために、
そして、もっと多くの方にこしあんの魅力を知って頂くために、
究極のこしあんのおかしを作りたいと思って起業しました。

― まず、どらやきを手がけた理由は何ですか?

第一作を何にしようかと考えた時に、お年寄りから子どもまで、
誰もが知っているおかしがいいなと思ったんです。
親しみやすさを感じて頂けるように。

― どらやきって、日本人にとってなじみ深いおかしですよね。

はい。中山屋は、和菓子だけでなく、こしあんの洋菓子も手がけたいと思っているので、
ミルクレープやラングドシャも考えたんですが、「それって何? 食べたことがない」
という人もいるかも知れない。
でも、どらやきを食べたことのない人って、多分ほとんどいないんじゃないでしょうか。
なので、多くの方に喜んで頂けるのでは、と考えました。
それに、こしあんのどらやきは、探してもなかなか見つからないんですよ。

― たしかに、どらやきと言えば、粒あんですね。不思議といえば不思議です。

そうなんです。子どもの頃から、こしあんのどらやきがあったらいいなあとずっと思っていました。

― でも、少数ながら、こしあんのどらやきも販売されてはいますよね。

はい。ただ、圧倒的に数が少ないです。
それにできることなら、皮もあんも僕自身が「これだ!」と思えるどらやきを食べたかった。
そういったどらやきがあればよかったんですが、なかなか出会えなかった。
だったら、もう自分で作るしかないなと思いました。

― 理想のどらやきがないから、自分で作った…ということだったのですね。
では、どんなどらやきを目指したのですか?

そうですね。一言で言うと、僕が毎日食べたいどらやき。
すなわち、「こしあんマニアに刺さるどらやき」です。
そして、皆さんにも美味しいと思って頂けるどらやきを目指しました。

― 具体的には、中山さんはどんなどらやきを毎日食べたいと?

とにかくきめ細やかで、スッキリとした甘さのこしあんが、
もちもちしたつきたてのお餅のような皮に、挟まれているどらやきです。
雑味がなく、小豆の風味がしっかり味わえる。
そんなこしあんのどらやきなら、僕は毎日何個でも食べられます。

― そういえば、よく見かけるどらやきの皮は、ふわふわしたスポンジ状ですね。

それが美味しいという方もいらっしゃると思うのですが、
僕は昔から、つきたてのお餅のなめらかさが大好きで、
子どもの頃に祖母から餅つき機を譲ってもらったくらいなんです。
あと、もちもちのタピオカも好きだったので、
気軽にタピオカドリンクが飲めるようになる前は、
中華街でタピオカの素を買って、自分で茹でていました。

― そこまで、もちもちした食感がお好きだったんですね…。

はい。だから、「こしあんのどらやき」では、
もちっとした皮をどうしても実現したいと試行錯誤しました。
「しっとり、もちもちした食感が美味しい」というお声を頂いて、ホッとしています。

― もう一つの特徴は、サイズ感ですよね。
「こしあんのどらやき」は、私が知っているどらやきより小ぶりでかわいのですが、
あえて小さくしているのですか。


そうです。ボリューム感のあるどらやきは、お年寄りや女性、小さな子どもには、
ちょっと大きすぎて食べきれないことがありますよね。
残してしまって罪悪感を持ったり、残念な気持ちになったりして欲しくないと思ったからです。

― 大ぶりのどらやきも美味しいですが、
それだけでおなかいっぱいになって残せばよかったと後悔することがあります。
でも残すと固くなるし……。


そうなんです。だから、「ああ、美味しかった。もうひとつ食べたい」「明日も食べたい」と
思って頂けるようなサイズにしたかったんです。
でも、小さすぎると満足感を持って頂けません。
なので、かなり研究して、今の大きさに決めました。
あれこれ考えたので、一時期は、丸いものを見ると全部どらやきに見えたほどです(笑)。

― それはすごい。そこまでして決定したサイズの評判はいかがですか?

「ちょうどいい大きさだ」
「甘いものが好きだけど、食が細くなって昔のようには食べられない、と仰る方にも、お贈りできる」と、
お褒めの言葉を頂いているので、嬉しいです。
しかし、冒頭でお伝えしたように、「子どもが、何個も食べたがって困る」
というお声に繋がってしまうんですけどね(笑)。
僕としては、毎日美味しいこしあんのおかしを食べて頂きたいという思いがあるので、
今後は、品質はそのままで、リーズナブルな価格帯のおかしも開発していきたいと考えています。

― ぜひ、期待しています! 他に、「こしあんのどらやき」が目指したことは?

どなたでも安心して食べられるよう、保存料や着色料などは一切使用していません。
また、国産の食材を使うことにもこだわりました。
シンプルな材料、良質な天然素材だけで作りたかったんです。
だから、そのままでは日持ちがせず冷凍でお届けするので、解凍のお手間をかけてしまうのですが、
その代わり、作りたてのもちもち感をご家庭で再現して頂けます!

― 家にいながら、できたての味が楽しめるのは嬉しいですよね。

はい。作りたての状態でお届けすることを優先し、冷凍配送という形にさせて頂いたのですが、
できたてならではのもちっとした皮の食感と、絹のように細やかなこしあんを、ぜひ楽しんで頂けたらと思います。
レンジで解凍すると、皮がお餅のようにやわらかくなるので、皆さん驚かれます。
また、「冷凍なので保存が利き、焦って食べなくてもいいので助かる」「好きな時に、できたてを食べられるので便利だ」
というご感想も頂いています。

― 「こしあんのどらやき」に込められた思いが伝わってきました。次回は、もちっとした皮がどのように完成したのか、ぜひ聞かせて頂きたいと思います。

インタビュー/構成:江藤ちふみ(ひゅうが書林)